売るのはアパートではなく「相続対策と安心」。管理戸数日本一を作った賃貸経営受託システムの光と影。
三重県で建築業から身を起こし、名古屋で大東産業(後の大東建託)を創業。武器は商品でなく「土地をお持ちですね」から始まる提案営業。地主の悩み(税金・遊休地・相続)に切り込む型を作り上げた。
建てたアパートをグループが丸ごと借り上げ、空室でもオーナーに家賃を支払う。地主の最大の不安(空室)を取り除くことで建築受注が決まり、建築の利益+管理・家賃収入のストックが両取りできる。大和ハウスと同じ型を、賃貸アパート一本に極限まで特化した。
高い歩合と厳格な数値管理で全国に営業部隊を展開。金融機関の融資を組み合わせた提案パッケージで、「土地はあるが現金はない」地主を大量に顧客化した。
2015年の相続増税で「借金してアパートを建てると相続税が減る」ニーズが爆発。業界全体が空前の受注に沸いた。
家賃保証が将来減額されうる仕組みについて社会的な関心が高まり、2020年サブリース新法で勧誘規制・重要事項説明が義務化され、「保証」の言葉の重みが法律で問われる時代になった。人口減少地域での供給過剰も構造課題として残る。
単位:億円(3月期・概数)。棒の数字=売上、「利」=営業利益。
※数値は直近または記載の決算期に基づく概数。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。
大和ハウス回との比較で見ると、「多角化のダイワ」対「特化の大東」の構図が鮮明になる。
大手ハウスメーカーが住宅・商業・物流へ分散する中、大東建託は賃貸アパートに一点集中。特化ゆえの営業効率と管理規模で、賃貸管理戸数日本一を守り続ける。
提案書の中心は建築図面でなく、相続税シミュレーションと収支計画。顧客の財布でなく、顧客の不安に値段を付ける営業設計が受注率を決める。士業(税理士・社労士)との連携が営業の生命線という点も特徴的。
サブリース新法は、将来の家賃減額リスクの説明を義務化した。営業トークの一言が法令違反になりうる時代への転換で、コンプライアンスが営業モデルそのものを規定するようになった業界の分水嶺。
空室・税金・相続という不安の解消が商品。建物はその手段にすぎない。
空室リスクの引き受け(借上げ)が最強の営業ツールになった。リスク移転こそ差別化。
賃貸アパート一本への集中が、営業・施工・管理の全てを規格化させ、管理戸数日本一を生んだ。
相続増税で沸き、サブリース新法で律された。制度感応度の高い事業は、制度を読む力が経営力。
35年の保証は35年の債務でもある。人口減少下での持続性という宿題は、これからが本番。