大学新聞の広告代理から、世界最大級のHRテックへ。「自ら機会を創り出せ」の文化が会社を2度救った経営フロー。
大学新聞の求人広告営業をきっかけに1960年創業。企業の採用情報だけを集めた冊子『企業への招待』は、「情報そのものを商品にする」日本初級のビジネスだった。社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」。
個人には情報をほぼ無料で配り、人が集まる場に企業が広告費を払う。求人で発明したこの型を、住宅(SUUMO)・結婚(ゼクシィ)・旅行(じゃらん)・飲食(ホットペッパー)と人生のあらゆる「選ぶ場面」に横展開した。
未公開株の譲渡をめぐる問題が社会的な批判を招き、創業者は経営を退いた。企業としての信用回復が、その後長く経営の課題となった。
不動産子会社の巨額負債を抱え、ダイエーの支援下に。だが現場の社員たちは事業を作り続け、十数年かけて借金を完済し独立性を回復した。「会社は潰れかけても、機会を作る文化は潰れなかった」と語られる時代。
求人「メディア」を破壊しかねない求人「検索エンジン」Indeedを、脅威が顕在化する前に買収。買収額は約10億ドル未満とされるが、いまやグループ最大の収益源に育ち、史上最も成功した日本企業の海外買収の一つと評される。2014年に上場、Glassdoor買収も重ねHRテック世界最大級へ。
単位:兆円(3月期・概数)。上場(2014年)以降の推移。棒の数字=売上、「利」=営業利益。
※数値は直近または記載の決算期に基づく概数。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。
「元リク」が経済界に散らばる会社。人と組織の仕組みこそ最大のプロダクトと言われる。
Microsoft傘下のLinkedInはプロフィール・人脈型、Indeedは求人検索型。世界の採用インフラの覇権を、日本企業が正面から争っている構図自体が快挙。
国内では媒体・紹介・派遣の各領域で競合各社としのぎを削る。リクルートは加えて「求人検索エンジン」という上流を海外まで押さえており、事業の広がり方に違いがある。
新規事業提案制度Ring、若手への大胆な権限移譲、そして卒業(退職・独立)を歓迎する文化。人材輩出企業と呼ばれ、元社員が起業家・経営者として各界に散らばる。雇用を囲い込まず、機会で人を惹きつける人事思想は、キャリア自律時代の先行モデル。
Indeedが普及すれば、自社の求人メディアの広告価値は毀損される。それでも「どうせ破壊されるなら自分で」と買収に踏み切った。イノベーションのジレンマを、買収で乗り越えた世界的にも稀な成功例。
モノでもサービスでもなく「選ぶための情報」を売る発明が原点。以後の全事業がこの一点の応用。
人を無料で集め、会いたい側から課金する。GoogleもIndeedも同じ構造で、リクルートは紙の時代からこれをやっていた。
創業者退場・巨額負債でも、機会を作る現場文化が事業を生み続けた。企業文化は最後のセーフティネット。
Indeed買収は自社事業の否定を含む決断。既存事業への愛着より、市場の未来を優先した。
卒業を歓迎する会社に、最も野心的な人材が集まる逆説。人的資本経営の数十年先行事例。