大阪の6坪の店から全国チェーンへ。値上げの失敗まで含めて、価格戦略の教科書になった経営フロー。
大阪・俊徳道の6坪の店で創業。開店当初から「全品均一価格」を貫き、キャッチコピーは「焼鳥の王様を目指す=鳥貴族」。メニューを鶏に絞り、価格を一つに絞る二重の集中で、オペレーションの原型を作った。
会計は品数×単価で即決、客は値段を見ずに注文でき、原価管理は「均一価格で成立する商品しか作らない」という開発規律になる。価格設定を捨てることが最大の価格戦略という逆説。
鶏肉は国産に統一(国産国消)、串打ちは店内で実施。低価格チェーンの常識(輸入・工場化)と逆を行くこだわりが、均一価格でも「安かろう悪かろう」と見られない信頼を作った。2014年に上場。FC(カムレード制度)は取引先や社員からの独立を軸にした身内主義で品質を守る。
28年守った280円を298円に改定すると、既存店客数が長期にわたり前年割れ。わずか18円で「280円均一の店」というアイデンティティが揺らいだ。回復には約2年を要し、価格が機能でなく「約束」になっている業態の値上げの難しさを、日本中の経営者が学んだ。
居酒屋業態はコロナで最も打撃を受け、赤字と時短協力金の時代を経験。以後の値上げ(327円→360円→370円)は、原価高騰の説明と品質強化をセットにした「納得の値上げ」に転換し、客数を維持しながら通過。ホールディングス化(エターナルホスピタリティ)で焼鳥の海外展開(米国・アジア)と「やきとり大吉」も傘下に加え、焼鳥で世界を目指すフェーズに入った。
単位:億円(7月期・概数)。棒の数字=売上、「利」=営業利益。
※数値は直近または記載の決算期に基づく概数。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。
サイゼリヤと並べて「価格を動かさない経営」の2大サンプル。ただしアプローチは正反対。
何でもそろう総合居酒屋が主流だった時代に、鶏一本の専門特化で「選ぶ理由」を作った。その後、焼鳥に絞った専門特化型の業態は業界全体へ広がり、単品特化は居酒屋の主要な戦略のひとつになった。
サイゼは調理を工場に集約、鳥貴族は店内仕込みを残しつつ価格ルールで全体を規律する。省人化の方法論が真逆で、飲食の生産性を語る最高の比較教材。
顧客が買っていたのは焼鳥でなく「280円均一というルールの明快さ」。価格改定はメニュー変更でなくブランドの約束の変更だった。以後の値上げが成功したのは、原価公開に近い説明と増量・品質強化で「約束の更新」として提示し直したから。値上げは金額でなく物語の設計という実例。
FCは原則として社員や取引先など「身内」からの独立に限定。急拡大よりブランド統制を優先する設計で、フランチャイズの拡大装置としての使い方(マクドナルド型)とは思想が異なる。
均一価格は販促でなくオペレーションOS。会計・発注・開発・教育のコストを同時に下げた。
鶏だけ・国産だけ・その価格で成立する商品だけ。絞るほど品質に投資できる。
約束を破る値上げは客離れ、約束を更新する値上げは受け入れられる。2017年と2022年以降の差がその証明。
創業者は値上げ失敗を率直に語り続けた。失敗の言語化が、次の値上げの納得を作った。
大吉買収と海外展開で、鳥貴族一本足からポートフォリオ経営へ。集中で作った強みを横に展開する段階に入った。