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Mirise / 開発標準

開発着手前の標準手順

Claude Code に指示を出す前に、何を、どの順番で、どこまで決めておくか。手戻りの大半は、コードを書く前の工程を飛ばしたことが原因で起きます。この手順書は、その前工程を固定するためのものです。

対象:社内システム/クライアント向けシステムの新規開発 前提スタック:Next.js / Supabase / Vercel 版数:1.0
01

全体像

6つの工程を順に通します。各工程には成果物と完了条件があり、完了条件を満たさないまま次に進まないことが、この手順の唯一のルールです。

工程成果物この工程で潰すリスク
1業務フローと課題の整理As-Is/To-Be の業務フロー、課題一覧そもそも作る必要のないものを作る
2データモデル設計テーブル定義、ER図、権限マトリクス後から作り直すと最も高くつく変更
3Excel 試作計算ロジックの検証ブック業務ルールの解釈違い、計算誤り
4画面モック画面イメージ、遷移の流れ操作導線の認識ズレ
5仕様書への統合機能単位の仕様書、受け入れ基準「正しく動く」の定義が曖昧なまま実装
6縦切り実装1機能が通しで動く状態認証・権限・デプロイの後付け
この順番である理由

画面から入ると、業務のほうが「作れそうな画面」に引っ張られます。データ構造から入ると、業務のほうが主で画面が従になる。工程2を工程4より前に置いているのは、この一点のためです。

02

各工程の詳細

「完了条件」は、次の工程に進んでよいかの判定基準です。曖昧な表現ではなく、他人が見て◯×を付けられる形にしてあります。

業務フローと課題の整理

誰の、どの作業を、どれだけ減らすのか。ここが言語化できていない依頼は、実装しても使われません。

やること
  • 現状の作業手順を、担当者・所要時間つきで書き出す
  • そのうち何を無くすのか、何を残すのかを線引きする
  • システム化せずに運用変更で解決できないかを一度検討する
成果物
As-Is 業務フロー、To-Be 業務フロー、課題一覧
完了条件
「この機能によって、誰の何分/月が減るか」を数字で言える

データモデル設計

後から一番高くつく変更がスキーマ変更です。画面は何度でも直せますが、テーブル構造の作り直しは既存データの移行を伴います。ここに一番時間をかけます。

やること
  • 主要テーブルと項目、型、必須/任意を決める
  • テーブル間の関連(1対多・多対多)を確定する
  • 誰がどの行を見られるかの権限マトリクスを作り、RLS の方針に落とす
  • 履歴を残す必要がある項目を洗い出す(改定履歴・改姓・異動など)
成果物
テーブル定義、ER図、権限マトリクス
完了条件
想定される検索・集計を、そのテーブル構成で表現できることを確認済み

Excel 試作でロジックを検証する

Excel は「実行可能な仕様書」です。計算ロジックをコードを書く前に、実際の担当者と数字で合意できます。当所のシステムは計算ルールが正しいかどうかが価値の大半なので、ここを最優先で潰します。

やること
  • 実データに近いサンプルで、入力から出力までを1枚で再現する
  • 端数処理、按分、日割り、上限・下限の扱いを明文化する
  • 例外パターン(月中入社、休職、二重加入など)を別行で用意する
成果物
検証ブック(そのままテストデータとして使う)
完了条件
担当者が実案件の数字を入れて、期待どおりの結果になることを確認済み

画面モックで合意する

確認するのは操作の流れだけです。色や余白、文言の細部はここで詰めません。動かしてから直したほうが速い領域です。

やること
  • 主要画面のラフと、画面間の遷移を並べる
  • 1画面あたり「何ができれば完了か」を1行で添える
  • 権限による表示差(見える人・見えない人)を明示する
成果物
画面モック画像、遷移図
完了条件
利用者が、モックだけを見て一連の作業を口頭で再現できる

仕様書に統合する

Claude Code に対して最も効く情報は、受け入れ基準です。「正しく動く」の定義が渡っていないと、それらしく動くだけのものが出来上がります。

やること
  • 機能単位でファイルを分け、docs/ に置く
  • 受け入れ基準は「入力A・Bのとき、出力はCになること」の形式で書く
  • Excel 試作の1行を、そのまま受け入れ基準として転記する
  • やらないこと(スコープ外)も明記する
成果物
機能別仕様書、受け入れ基準一覧、CLAUDE.md
完了条件
受け入れ基準が、すべて数字か◯×で判定できる書き方になっている

縦切りで実装する

全機能の設計を完璧にしてから作り始めるのではなく、最小の1機能を DB から画面まで一本貫通させます。認証・権限・デプロイまで先に通しておくと、以降の機能追加が急に速くなります。

やること
  • 最も代表的な1機能を選び、DB → API → 画面 → デプロイまで通す
  • そのうえで機能を1つずつ足す。1コミット1機能
  • 常に動く状態を保つ。壊れたまま次に進まない
成果物
本番環境で動作する最小構成
完了条件
実際の利用者が、本番環境で1件分の業務を完了できる
03

Claude Code への渡し方

前工程の成果物をどう渡すかで、出力の質が大きく変わります。守るのは3点だけです。

原則 1仕様は分割して渡す

1ファイルの大作にせず、docs/ に機能単位で分割し、CLAUDE.md から参照させます。長大な仕様を一度に渡すと、後半の指示ほど精度が落ちます。

原則 2実装の前に設計案を出させる

「まず設計案と、変更対象ファイルの一覧を出してください。実装はまだしないでください」と指示し、内容を確認してから実装に進みます。このひと手間が、手戻りを最も減らします。

原則 3小さく変更し、都度動かす

1コミット1機能。動かないコードを積み上げないこと。まとめて指示するほど、どこで壊れたかの特定に時間がかかります。

04

よくある失敗

前工程を丁寧にやっているときほど起きやすい失敗です。

失敗 AExcel の構造をそのままテーブルにしてしまう

Excel は横に項目を並べますが、データベースは縦持ち・正規化が基本です。Excel シートをそのまま列に置き換えると、項目が増えるたびにスキーマ変更が必要な構造になります。

対処:Excel は「ロジックの検証装置」であって「テーブル設計図」ではない、と切り分ける。工程2と工程3は別物として扱う。

失敗 BExcel を作り込みすぎる

検証のつもりが完成品になり、「Excel で足りるのでは」となる。

対処:それが正しい答えなら素直に受け入れる。開発しないという判断も、この手順の正常な出力です。

失敗 C権限設計を後回しにする

給与、マイナンバー、健康情報を扱う以上、「誰がどのデータを見られるか」は最も後付けが苦しい領域です。画面を先に量産してから権限を入れると、ほぼ全画面の作り直しになります。

対処:工程2でテーブル定義と同時に権限マトリクスを作り、RLS の方針まで決めておく。

失敗 D受け入れ基準が「〜できること」で書かれている

「賃金を正しく計算できること」では判定できません。実装者にとっても、Claude Code にとっても情報量がゼロです。

対処:「月給25万円・月中10日入社の場合、日割り支給額は◯円になること」の形式に直す。

05

決める順番の判断軸

5人規模の事務所で、要件定義書・基本設計書・詳細設計書と積むのは過剰です。判断基準は一つ、変更コストが高いものだけ先に決めることです。

先に決める

後から変えると高くつくもの

  • データモデル(テーブル・関連・履歴の持ち方)
  • 業務ルール(計算式、端数処理、例外の扱い)
  • 権限とデータの見える範囲
  • 受け入れ基準
  • 外部連携の有無と方式

動かしてから決める

後から変えても安いもの

  • 画面レイアウト、余白、色
  • ボタンやラベルの文言
  • 一覧の並び順、初期表示件数
  • 絞り込み条件の追加
  • 細かい操作性の改善
運用への落とし込み

「スクリーンショット → モック → 合意 → 実装」の進め方は、右側(動かしてから決める領域)の運用としてよく機能します。その手前に、左側の合意を一段挟むこと。それだけで後半のスピードがそのまま成果になります。

06

テンプレート

そのままコピーして使えるひな形です。

ドキュメント構成
CLAUDE.md ← 全体方針。docs/ への参照を書く docs/ 00_overview.md ← 目的、利用者、スコープ外 01_data_model.md ← テーブル定義、ER図、権限マトリクス 02_rules.md ← 業務ルール・計算ロジック 10_feature_xxx.md ← 機能ごとに1ファイル 90_acceptance.md ← 受け入れ基準一覧 data/ sample.xlsx ← 工程3の検証ブック
機能仕様書のひな形
# 機能名 ## 目的 誰の、どの作業を、どう変えるか(1〜2行) ## 利用者と権限 - 管理者: - 一般: ## 入力 | 項目 | 型 | 必須 | 備考 | ## 処理ルール - 端数処理: - 例外パターン: ## 出力 ## 受け入れ基準 - [ ] 入力Aのとき、出力はBになること - [ ] 一般権限では、他部署の行が表示されないこと ## スコープ外 - 今回やらないこと
Claude Code への初回指示
docs/ の 00, 01, 02, 10_feature_xxx を読んでください。 そのうえで、まず以下だけを出してください。実装はまだしないでください。 1. 実装方針(どういう構成にするか) 2. 変更・新規作成するファイルの一覧 3. 仕様の中で判断がつかなかった点、確認したい点 確認後に実装を依頼します。
受け入れ基準の書き方
悪い例 - 賃金を正しく計算できること - 権限に応じて表示が変わること 良い例 - 月給250,000円・月中10日入社の場合、 日割り支給額は80,645円(円未満切捨て)になること - 一般権限でログインした場合、 所属部署以外の従業員が一覧に表示されないこと
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着手前チェックリスト

Claude Code に最初の実装を依頼する前に、これらがすべて埋まっていることを確認します。

社会保険労務士法人ミライズ労務コンサルティング
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