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2026.07.20 経営

衰退したビジネスモデル図鑑 ― どこで折れたのか

REPORT / AIバブルと専門サービスの未来 #02

技術ブームが去ったあと、それを支えていたビジネスモデルは、どこで折れたのか。本稿は、7つの技術ブームを支えたモデルを解剖し、破断点(モデルが折れた場所)に印をつけた「図鑑」である。取り上げるのは、エキスパートシステム、RPA導入支援、SFA/CRM・ナレッジマネジメント、ERP導入コンサル、ドットコム、メタバース・NFT、ビッグデータの7つ。折れ方は「技術の限界」「現場との断絶」「期待の自己増殖」の3つの型に大別できる。

それぞれのモデルについて、正常に機能した部分と折れた工程を区別し、「死因」と「その後」を検死記録として添えた。そして最後に、対照として生き残ったモデルの形を置く。判定はひとつの問いに集約される。

この記事の要点
  • 7つの技術ブームを支えたモデルを解剖。折れ方は「技術の限界」「現場との断絶」「期待の自己増殖」の3類型に整理できる。
  • エキスパートシステムは「知識獲得のボトルネック」で折れて約20年の「AIの冬」を招き、SFA/CRMは導入企業の7〜8割が失敗とも言われ、1年以内に形骸化する例が4割にのぼった。
  • ドットコムは2000年の崩壊(ナスダック年間▲39%)で期待のループが停止し、生き残ったのは1割未満。メタバース・NFTは実需の不在で2022〜2023年に幻滅期入りした。
  • 生き残ったモデルの判定基準はひとつ――「技術の看板を外しても、顧客はお金を払い続けるか」
目次
  1. 00この図鑑の見方――破断点と検死記録
  2. 01Ⅰ. 技術の限界で折れたモデル
  3. 02Ⅱ. 現場との断絶で折れたモデル
  4. 03Ⅲ. 期待の自己増殖で折れたモデル

この図鑑の見方――破断点と検死記録

見方はシンプルである。各モデルの仕組みを「工程の流れ」として表に示し、正常に機能した部分と、破断点(モデルが折れた場所)を区別して印をつけた。各表の下には、そのモデルの死因その後を検死記録として添えている。折れ方の型は、Ⅰ. 技術の限界、Ⅱ. 現場との断絶、Ⅲ. 期待の自己増殖の3つである。順に見ていく。

Ⅰ. 技術の限界で折れたモデル

モデルの中に、人力では支えきれない工程が埋まっていた型。

01 エキスパートシステム 1980年代(第2次AIブーム) 知識移植型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① 専門家の暗黙知 医師・技術者の判断ノウハウ → 人手でIF-THEN化
② ルール化・保守
破断点
膨大・言語化困難・矛盾続出=知識獲得のボトルネック → 推論
③ 企業が利用 専門家のように回答
死因
知識をシステムに運ぶ工程がすべて手作業だった。専門知識は言語化が難しく、ルールの整合性維持が人力の限界を超え、導入企業ごとに保守が破綻。約20年の「AIの冬」へ。
その後 生成AIが「知識の言語化」を自然言語処理で解決。死因そのものが現在の技術の出発点になった。

02 RPA導入支援 2017–2019(幻滅期宣言) 操作再現型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① 人の画面操作 定型業務の手順 → 記録・複製
② ロボット量産 「デジタルレイバー」 → 業務が変わると壊れる
③ 保守・維持管理
破断点
野良ロボット化・作成保守の工数が削減効果を食い潰す
死因
画面操作の再現という狭い技術ゆえ、画面や業務が変わるたびに停止。ロボットが増えるほど保守負債が積み上がり、期待された工数削減とコストメリットが実現しなかった。
その後 適用範囲を見直し、約1年で幻滅期を脱して実用定着。「熱狂→幻滅→定着」の最速モデルケースに。

Ⅱ. 現場との断絶で折れたモデル

価値の生産を現場に依存しながら、現場に見返りを返さなかった型。

03 SFA/CRM・ナレッジマネジメント 2000年代– 現場入力依存型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① 現場が入力
破断点
入力負荷・二重管理。本業の時間を奪う → データが入らない
② データ蓄積 空の箱になる → 分析
③ 経営が活用 恩恵は経営側だけ
死因
コストを払うのは現場、リターンを得るのは経営という非対称。導入企業の7〜8割が失敗とも言われ、1年以内に形骸化する例が4割。社員の意識ではなく構造の問題だった。
その後 AIによる自動記録・自動入力が「入力負荷」という死因を直接解消しつつあり、モデル自体が再生中。

04 ERP導入コンサル 1990年代後半 重装備導入型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① 経営の不安 バブル崩壊後のコスト削減圧力 → 「救世主」への期待
② 高額ライセンス+導入コンサル
破断点
過剰カスタマイズの泥沼。数億円規模・長期化 → 効果が届かない
③ 業務変革 頓挫・塩漬け続出
死因
技術と顧客の間に立つ中間層(ベンダー+コンサル)が肥大化。自社流に合わせる過剰カスタマイズが費用と期間を膨張させ、費用対効果が見えないまま現場は疲弊した。
その後 クラウド化(SaaS)で導入の重さが解消され、中小企業でも使える形に軟着陸。高額導入コンサルの部分だけが崩れた。

Ⅲ. 期待の自己増殖で折れたモデル

実業ではなく「期待そのもの」が収益源だった型。ループが止まると即死する。

05 ドットコム(期待販売型) 1995–2001 物語循環型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① 物語を語る 「ネットが世界を変える」 → 株価上昇
② 投資マネー流入
破断点
唯一の収入源。顧客からの収益ほぼゼロ → 広告・拡大
③ さらに期待増幅 冒頭へ戻る(循環) → ①へ戻る

↻ このループは期待が萎んだ瞬間に全体が停止する

死因
収益源が実業ではなく期待そのもの。2000年の崩壊(ナスダック年間▲39%)でループが止まり、生き残ったのは1割未満。Pets.com・Webvanなどが典型。
その後 実収益と顧客を持っていたAmazon・eBay・Googleだけが残り、過剰敷設された光ファイバーが次の時代の土台になった。

06 メタバース・NFT 2021–2023 転売期待型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① 参入コスト 高価なデバイス/トークン購入 → 保有
② デジタル資産・土地 値上がり期待で保有 → 次の買い手が来ない
③ 実需(そこで何をする?)
破断点
滞在する理由・使う理由の不在
死因
価値の裏付けが「次に高く買う人」への期待のみで、日常的な実需が育たなかった。2022年にNFT、2023年にWeb3が幻滅期入り。Disney・Microsoftが撤退し、MetaもAIへ転進。
その後 技術(VR/ブロックチェーン)は残り、ゲーム・産業用途など実需のある領域で静かに継続中。

07 ビッグデータ(バズワード型) 2010年代前半 手段目的化型

モデルの流れ 中身 次の工程へ
① Hadoop等の登場 無限にデータを貯められる → とりあえず蓄積
② 「貯めること」が目的化
破断点
何に使うかは後回し。活用できる人材も不足 → 問い直し
③ 実務への定着 DX・データ分析職として生存
死因
「データがあるなら活用しないのは惜しい」という手段の目的化。バズワードとしての熱は数年で冷めた。
その後 唯一の「軟着陸型」。言葉は死んだが実務は残り、データサイエンティストは10年後も生き残る職業になった。AIの未来に最も近いシナリオ。
SUMMARY
「技術の看板を外しても、顧客はお金を払い続けるか」

対照として、生き残ったモデルの形はこうである。顧客の現実の課題(ブームと無関係に存在し続ける)を起点に、技術は裏側の道具にとどめて実業が成果を出す(商品が届く・労務が回る・数字が見える)。そして成果への対価として現実のキャッシュフローが生まれ、期待が萎んでも途切れない。

7つの破断点はすべて、このシンプルな循環のどこかが欠けていた。判定はひとつ――「技術の看板を外しても、顧客はお金を払い続けるか」である。

※本図鑑はガートナー各年版ハイプサイクル・各種公開資料をもとに構成。

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※本レポートは公開情報に基づく2026年7月時点の分析・見解です。個別の経営判断・労務判断については個別にご相談ください。

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