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2026.07.20 経営

ペレスの図式 ― 技術革命のライフサイクル

REPORT / AIバブルと専門サービスの未来 #03

バブルは事故ではなく、技術革命の正規のプロセスである――カルロタ・ペレスが『Technological Revolutions and Financial Capital』(2002)で示した図式の核心はここにある。1つの技術革命は約50年をかけて4つの局面を辿り、真ん中にはバブル崩壊=転換点が組み込まれている。本稿はこの「ペレスの図式」を1枚に整理し、いまのAIブームに当てはめる。

この記事の要点
  • 1つの技術革命は約50年で「勃発期→狂乱期→転換点→シナジー期→成熟期」を辿る。前半の主役は金融資本(投資家)、後半は実業資本(事業会社)で、バブル崩壊=転換点で主役が交代する。
  • 1771年の産業革命以来、5つの技術革命はすべて同じ図式を辿った。各革命の狂乱期には必ずバブルがあり、崩壊後に黄金時代が来た。
  • 鉄道バブルで儲けたのは投機家ではなく、安くなった線路の上で商売をした事業者だった。熱狂が「作りすぎた」インフラは、崩壊後も安値で残る。
  • GPU・データセンター投資はかつての線路敷設に相当し、現在は狂乱期の入口という読みになる。黄金時代の条件は「業務プロセスのAI前提の再設計・独自データの蓄積・責任を引き受けられる専門性」。
目次
  1. 00全体像――1つの革命は約50年、4つの局面を辿る
  2. 015つの技術革命――すべて同じ図式を辿った
  3. 02図式を現在に当てはめる

全体像――1つの革命は約50年、4つの局面を辿る

前半の主役は金融資本(投資家)、後半の主役は実業資本(事業会社)。真ん中のバブル崩壊=転換点で主役が交代する。まずは図式の全体像から見ていく。

導入期 主役:金融資本(投資マネー) 展開期 主役:実業資本(事業会社) 時間 (約50年) 技術の社会浸透度 投機的な期待 (実体から乖離) 転換点 バブル崩壊・制度の再設計 ① 勃発期 ② 狂乱期 ③ シナジー期 ④ 成熟期 黄金時代 本当の生産性向上はここで起きる 生成AIの現在地? 投機がインフラを 過剰に敷設する 技術は空気になり 次の革命の種が育つ

実線=技術の実際の浸透/破線=金融資本が膨らませる期待。両者の乖離が最大化した時、転換点(崩壊)が来る。
局面 主役 何が起きるか
① 勃発期 Irruption 前半――金融資本の時代 1971年 マイクロプロセッサ登場/2022年 ChatGPT登場 新技術が登場し、先駆者と冒険的な資本が熱狂。旧産業は停滞し、新旧の対立が始まる。
② 狂乱期 Frenzy 前半――金融資本の時代 1840年代 鉄道株バブル/1990年代後半 ドットコム/現在のAI投資? 投資マネーが殺到しカジノ経済化。株価は実体から乖離するが、この熱狂こそが線路・光ファイバー・GPUといったインフラを「作りすぎて」くれる。
③ シナジー期 Synergy=黄金時代 後半――実業資本の時代 戦後1950-60年代の大量生産黄金期/2000年代のGAFA 安くなったインフラの上で技術が全産業・全生活に浸透。本当の生産性向上と広範な繁栄はここで実現する。
④ 成熟期 Maturity 後半――実業資本の時代 2010年代後半のスマホ・クラウドの空気化 技術は当たり前の存在になり成長は鈍化。余った資本が次の新技術を探し始め、次の革命の勃発期につながる。
転換点 Turning Point――バブル崩壊と主役交代(②と③のあいだ)
例: 1929年 大恐慌/2000年 ドットコム崩壊。期待と実体の乖離が臨界に達して崩壊。金融の暴走への反省から規制・制度が再設計される。投機家は退場するが、敷設されたインフラは安値で残り、それを使う実業側に主導権が移る。狂乱期に儲けようとする者と、展開期に実りを刈り取る者は別人であることが多い。

5つの技術革命――すべて同じ図式を辿った

約50〜60年周期。各革命の狂乱期には必ずバブルがあり、崩壊後に黄金時代が来た。

図式を現在に当てはめる

鉄道バブルで儲けたのは投機家ではなく、
安くなった線路の上で商売をした事業者だった。

図式の各要素を、いまのAIブームに対応づけると次のようになる。

ペレスの図式 いまのAIブーム
狂乱期の投機マネー GPU・データセンターへの巨額投資、AI銘柄の高騰、高額AI導入コンサルの乱立
敷設されるインフラ 計算資源・基盤モデル・API/MCPなどの接続規格。崩壊しても残り、利用コストは下がり続ける
転換点で退場する側 「AIへの期待」自体を収益源にする層(期待を売るビジネス)
展開期の主役 AIを道具として使い、AI以外の成果(労務・会計・経営の結果)に対価をもらう実業側
黄金時代の条件 ①業務プロセスのAI前提の再設計 ②独自データの蓄積 ③責任を引き受けられる専門性
SUMMARY
いま何をすべきか

ペレスの図式が示す答えはシンプルです。狂乱期の今、ブームに乗って期待を売ることではなく、転換点が来るまでに業務の再設計を完了させておくこと。

崩壊はインフラを安くし、競合を淘汰し、準備を終えた実業側に黄金時代の取り分をもたらします。電気モーターの教訓の通り、貼り付けるだけでは効果は出ず、プロセスごと作り直した者だけが生産性の爆発を手にします。

※Carlota Perez『Technological Revolutions and Financial Capital』(2002)の図式をもとに構成

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※本レポートは公開情報に基づく2026年7月時点の分析・見解です。個別の経営判断・労務判断については個別にご相談ください。

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