求職者等へのセクハラ防止措置の義務化|2026年10月から採用活動で必要な11の措置
2026年10月1日から、就職活動中の学生やインターンシップの参加者など「求職者等」へのセクシュアルハラスメントを防ぐ措置が、事業主の義務になります。OB・OG訪問の場での不適切な言動や、面接後に個人のSNSで連絡してくる――こうした問題が社会的に取り上げられてきたことを受けた改正です。
本記事では、改正男女雇用機会均等法と厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第52号)にもとづき、採用活動を行う会社が何をしなければならないかを、社会保険労務士が整理します。同じ日に施行されるカスハラ対策はカスハラ対策の義務化で解説しています。
- ✓根拠は男女雇用機会均等法 第13条。2026年10月1日施行。
- ✓対象の「求職者等」には、応募者のほかインターンシップ・会社説明会・OB・OG訪問の参加者、教育実習などの実習生も含まれる。
- ✓措置は11項目。独自の2つは「面談の時間・場所・連絡手段などのルール」と「求職者向けの相談窓口」。
- ✓勧告に従わないと企業名が公表されることがある。懲戒規定に「求職者等へのセクハラ」を加えておく。
何が義務になったのか(2026年10月1日施行)
職場のセクハラ防止措置は、これまでも男女雇用機会均等法第11条で義務づけられていました。ただし対象は「雇用する労働者」で、まだ雇用されていない就活生などは、法律上の保護の外にありました。改正法(令和7年法律第63号)は、新たに第13条を設けて、求職者等に対するセクハラの防止措置を義務づけました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 男女雇用機会均等法 第13条(第1項:措置義務/第2項:相談への協力を理由とする労働者への不利益取扱いの禁止) |
| 施行日 | 2026年10月1日 |
| 具体的な措置 | 「事業主が職場における求職者等に対する性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号・2026年2月26日告示) |
| 採用活動をしていない会社 | 求職者等と接する機会がない間は、すべての措置を講じていなくても差し支えない。説明会や面接を始めた時点で、すべての措置が必要になる |
「求職者等」とは誰か:インターン・OB・OG訪問も対象
「求職者等」には、次の人が含まれます(均等法施行規則第2条の3)。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 求職者 | 応募者、面接を受ける人 |
| 採用に資する活動の参加者 | インターンシップ、会社説明会、OB・OG訪問(自社の社員を訪ねてくる人)の参加者 |
| 実習を受ける人 | 教育実習、看護実習など |
場所や手段も広く捉えられます。オンラインやSNS上のやり取りも含み、OB・OG訪問で使う飲食店・貸会議室・大学のキャンパスも対象です。懇親の場であっても、実質的に採用活動の延長であれば含まれます。
一方で、社会科見学や、授業の一環として企業が招かれる講演会など、専ら教育目的の活動の参加者は対象外です。また、内定者は労働契約が成立していれば「労働者」として第11条の対象になり、成立していなければ「求職者等」として扱われます。
会社が講ずべき11の措置
指針が定める措置は次の11項目です。採用活動を行う会社は、すべて講じる必要があります。
| 区分 | 措置 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | ① 求職者等へのセクハラの内容と、行ってはならない旨の方針を明確にし、管理職を含む従業員に周知する ② 行為者には厳正に対処する旨と、その内容を就業規則等に定めて周知する ③ 求職活動等に関するルールをあらかじめ決め、従業員と求職者等の双方に周知する |
| 相談体制の整備 | ④ 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する ⑤ 窓口の担当者が適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速・適切な対応 | ⑥ 事実関係を迅速・正確に確認する ⑦ 被害者に配慮する措置を行う ⑧ 行為者に対する措置を行う ⑨ 再発防止策を講じる(事実が確認できなかった場合も同様) |
| あわせて講ずべき措置 | ⑩ 相談者・行為者のプライバシーを保護し、従業員と求職者等の両方に周知する ⑪ 事実確認への協力などを理由に、従業員を不利益に扱わない旨を定めて周知する |
独自項目①:求職活動等のルールを決めて周知する
今回の改正で最も特徴的なのが、求職活動等のルールの明確化です。採用担当者やOB・OG社員と求職者が、密室や私的な連絡手段でやり取りする状況をなくすことが目的です。
厚生労働省のパンフレットが示す、求職者向けの周知文の例は次のとおりです。
このルールは、社員向けの研修で周知するとともに、採用ページや会社説明会の資料で求職者にも示す必要があります。求職者が「このルールと違う誘い方をされたらおかしい」と気づける状態にしておくことが、被害の抑止につながります。
独自項目②:求職者向けの相談窓口
相談窓口は、社内の担当者を決める、制度を設ける、外部の機関に委託する、のいずれの方法でも構いません。ポイントは、採用ページやパンフレットに窓口の部署名と連絡先を載せ、求職者が実際にアクセスできる状態にすることです。
誰の行為が対象になるか
措置義務の対象となる行為者は、自社が雇用する労働者です。正社員に限らず、パート・契約社員も含み、採用担当者、面接官、OB・OG訪問に応じる社員のいずれも該当します。
| 行為者 | 扱い |
|---|---|
| 自社の労働者(採用担当・面接官・OB・OG社員など) | 措置義務の対象。事実確認、被害者への配慮、行為者への懲戒、再発防止を行う |
| 社長・役員 | 「雇用する労働者」ではないため措置義務の直接の対象外。ただし、必要に応じて適切に対応するよう努めることが望ましいとされる |
| 取引先など他社の労働者 | 措置義務の対象外。指針の措置を参考に、適切に対応するよう努めることが望ましいとされる |
懲戒規定には、懲戒事由として「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」を明記しておきましょう。既存の「職場におけるセクハラ」の規定だけでは、対象が従業員への行為に限られていると読まれるおそれがあります。
対応しなかったらどうなるか
| 対応 | 根拠 |
|---|---|
| 厚生労働大臣(都道府県労働局長)による報告の求め、助言・指導・勧告 | 第35条 |
| 勧告に従わない場合の企業名の公表 | 第36条 |
| 報告をしない、または虚偽の報告をした場合の20万円以下の過料 | 第39条 |
なお、募集・採用に関する紛争は、労働局の調停の対象から除かれているため、求職者は調停を利用できません。ただし、労働局の雇用環境・均等部(室)への相談は可能です。採用の場でのハラスメントは、SNSなどで拡散すれば採用ブランドへの打撃にも直結します。
施行直前チェックリスト
2026年10月1日から、インターンシップやOB・OG訪問の参加者を含む求職者等へのセクハラ防止措置が義務になります。既存のセクハラ防止措置に加えて、面談の時間・場所・連絡手段などのルールを決めて社員と求職者の双方に周知すること、求職者がアクセスできる相談窓口を設けること、懲戒規定に明記することが、施行までに整えるべき中心です。
名古屋を拠点に、ハラスメント防止規程・懲戒規定の改定、面談ルールと求職者向け周知文の作成、相談窓口の整備までを支援しています。カスハラ対策とあわせた一括の見直しもご相談ください。初回相談は無料です。
※本記事は2026年9月時点の男女雇用機会均等法、同施行規則、令和8年厚生労働省告示第52号(指針)、厚生労働省の公表資料にもとづく一般的な情報です。個別の事案が対象になるか、どの措置が適切かは状況によって異なります。