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2026.09.19 社会保険・年金

役員報酬の変更と標準報酬月額|月額変更届と改定のタイミング

COLUMN / 社会保険・年金

株主総会で役員報酬を上げた、あるいは業績に合わせて下げた。そのとき社会保険料がいつから、いくら変わるかを正確に答えられる社長は多くありません。役員報酬の変更は、税務の「定期同額給与」と、社会保険の「随時改定(月額変更届)」の両方のルールにかかわります。

本記事では、役員報酬を変更したときの標準報酬月額の改定のタイミングと、保険料の変わり方を、協会けんぽ愛知支部の令和8年度の料率で試算しながら整理します。標準報酬月額の仕組みそのものは役員報酬と社会保険料の関係で解説しています。

この記事の要点
  • ✓役員報酬を変えると、要件を満たせば変動月から4か月目に標準報酬月額が改定される(随時改定)。
  • ✓要件は固定的賃金の変動・3か月平均で2等級以上の差・3か月とも支払基礎日数17日以上の3つ。減額も対象。
  • ✓月50万円→80万円に増額すると、愛知・40〜64歳の例で保険料は労使合計で月約6.2万円増える。
  • ✓厚生年金の標準報酬月額の上限は、2027年9月から段階的に引き上げ(68万→71万→75万円)。高い報酬の役員ほど影響する。
目次
  1. 00役員報酬を変えても、保険料はすぐには変わらない
  2. 01随時改定(月額変更届)の3つの要件
  3. 02いつから変わるか:3月決算の例
  4. 03増額したときの保険料(愛知・令和8年度の計算例)
  5. 04減額したときの注意点
  6. 05役員賞与と標準賞与額
  7. 062027年からの厚生年金の上限引上げ
  8. 07役員報酬を決める前のチェックリスト

役員報酬を変えても、保険料はすぐには変わらない

社会保険料は、実際の報酬額ではなく、報酬を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額に料率を掛けて計算します。標準報酬月額は、原則として毎年7月の算定基礎届で1年分が決まり(定時決定)、その年の9月から翌年8月まで使われます。

そのため、期の途中で役員報酬を変えても、翌月から保険料が変わるわけではありません。一定の要件を満たしたときに、年の途中で標準報酬月額を改める仕組みが随時改定で、そのとき年金事務所に出す届出が月額変更届です。

随時改定(月額変更届)の3つの要件

次の3つをすべて満たすと、随時改定になります。役員かどうかで要件は変わりません。

要件 1
固定的賃金が変動した
昇給・降給など、毎月決まって支払う報酬の額が変わったこと。役員報酬の増額・減額はこれに当たります。日給から月給への変更など、賃金体系の変更も含みます。

要件 2
3か月平均で2等級以上の差がある
変動後の報酬を支払った月から3か月の平均で出した標準報酬月額が、いまの等級と2等級以上違うこと。

要件 3
3か月とも支払基礎日数が17日以上
3か月とも、報酬の支払の基礎となった日数が17日以上あること。月給制の役員は通常これを満たします。

ポイント
1等級しか変わらない小さな増額・減額では、随時改定になりません。その場合は、次の定時決定(7月の算定基礎届)で見直されます。

いつから変わるか:3月決算の例

3月決算の会社が、6月の定時株主総会で役員報酬の増額を決め、7月支給分から増額した場合の流れです。

時期 できごと
6月 定時株主総会で役員報酬の改定を決議(議事録を作成)
7月・8月・9月 増額後の報酬を支給。この3か月の平均で新しい等級を出す
9月の支給後 2等級以上の差があれば、月額変更届を年金事務所へ提出(期限は「速やかに」)
10月分〜 新しい標準報酬月額で保険料を計算(変動月の7月から数えて4か月目)

税務のほうでは、役員給与を損金に算入するための定期同額給与のルールがあり、通常の改定は会計期間開始日から3か月を経過する日まで(3月決算なら6月末まで)に行う必要があります。期中の改定は、役員の地位や職務の重大な変更(臨時改定事由)や、経営状況の著しい悪化(業績悪化改定事由)などに限られます。税務上の取扱いは、顧問税理士とあわせてご確認ください。

増額したときの保険料(愛知・令和8年度の計算例)

役員報酬を月50万円から月80万円に増額した場合の、保険料の変化を試算します(協会けんぽ愛知支部・令和8年度、介護保険の対象となる40〜64歳、労使合計の月額)。

項目 増額前(月50万円) 増額後(月80万円)
健康保険の標準報酬月額 500,000円 790,000円
厚生年金の標準報酬月額 500,000円 650,000円(上限)
健康保険+介護保険(11.55%) 57,750円 91,245円
子ども・子育て支援金(0.23%) 1,150円 1,817円
厚生年金保険(18.3%) 91,500円 118,950円
合計(労使合計) 150,400円 212,012円

増額後は、労使合計で月61,612円、年間で約74万円保険料が増えます。このおよそ半分ずつを会社と役員本人が負担します。このほか、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金(0.36%)も、月1,800円から2,340円に増えます。

上限の効き方
厚生年金の標準報酬月額は、現在65万円が上限です。報酬月額が63.5万円以上になると、それ以上報酬を上げても厚生年金保険料は増えません。一方、健康保険は139万円まで等級があるため、増額分に応じて増え続けます。

※保険料は端数処理の前の概算です。実際の控除額は、保険料額表と給与計算の端数処理によって異なります。

減額したときの注意点

業績悪化などで役員報酬を減額した場合も、3つの要件を満たせば随時改定の対象です。ただし、改定されるのは減額した月から4か月目なので、それまでの3か月は、高い標準報酬月額のまま保険料がかかります。

注意
減額の効果は、社会保険料だけでは判断しないでください。標準報酬月額が下がると、将来の厚生年金の額や、病気のときの傷病手当金も下がります。また、報酬を下げたのに実態は変わっていないなど、形式だけの変更は事業所調査で確認されることがあります。株主総会・取締役会の議事録を残し、変更の理由を説明できるようにしておきましょう。

役員報酬と年金の関係は経営者の年金と在職老齢年金もあわせてご覧ください。

役員賞与と標準賞与額

役員に賞与を支給する場合、社会保険では標準賞与額に料率を掛けて保険料を計算します。標準賞与額には上限があります。

保険 標準賞与額の上限
健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金 年度(4月〜翌3月)の累計で573万円
厚生年金保険 1か月あたり150万円

税務上、役員賞与を損金に算入するには、原則として事前確定届出給与として税務署に届け出る必要があります。届出の期限は、株主総会等の決議日から1か月を経過する日と、会計期間開始日から4か月を経過する日のいずれか早い日です。報酬を「月額」と「賞与」にどう分けるかで社会保険料は変わるため、税務と社会保険の両面から設計することが大切です。

2027年からの厚生年金の上限引上げ

2025年に成立した年金制度改正法により、厚生年金の標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられます。

時期 厚生年金の標準報酬月額の上限
現在 65万円(第32級)
2027年9月〜 68万円(第33級)
2028年9月〜 71万円(第34級)
2029年9月〜 75万円(第35級)

上の計算例のように、報酬月額が高い役員は、いまは厚生年金保険料が上限で止まっています。上限の引上げにともなって、会社と本人の負担は段階的に増えます(その分、将来の年金額にも反映されます)。数年先の報酬設計では、この点も織り込んでおきましょう。

役員報酬を決める前のチェックリスト

CHECK 1
改定の時期は税務のルールに合っているか
定期同額給与の通常改定は、会計期間開始日から3か月以内。期中の改定は理由が限られます。

CHECK 2
社会保険料の増減と、改定される月を把握したか
2等級以上の差があれば、変動月から4か月目に改定。月額変更届の提出を忘れない。

CHECK 3
給付への影響を確認したか
減額すると、将来の年金や傷病手当金も下がります。保険料だけで判断しない。

CHECK 4
議事録を残したか
株主総会・取締役会の議事録で、改定の内容と理由を説明できるようにしておきます。

まとめ

役員報酬を変えても、社会保険料が変わるのは要件を満たしたときの「変動月から4か月目」です。3か月平均で2等級以上の差があれば月額変更届を出し、1等級の差なら次の定時決定で見直されます。増額・減額のどちらも、税務の定期同額給与、社会保険料、年金などの給付への影響を並べて判断することが大切です。

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※本記事は2026年9月時点の法令、日本年金機構・協会けんぽ愛知支部(令和8年度)・国税庁の公表資料にもとづく一般的な情報です。保険料は概算です。税務上の取扱いは顧問税理士に、個別の手続きは専門家にご確認ください。

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