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2026.09.21 労務管理

運送業の36協定|年960時間の特別条項と様式第9号の3の5の書き方

COLUMN / 労務管理

2024年4月から、トラック運転者にも時間外労働の上限規制が適用され、36協定の中身と様式が変わりました。一般の労働者とは上限の考え方も、届け出る様式も違うため、以前の協定をそのまま更新していると、記載漏れや様式違いが起きやすくなっています。

本記事では、運送会社が36協定を結ぶときに押さえるべき、年960時間の特別条項のルール、使う様式、記載のポイントを社会保険労務士が整理します。36協定の基本は36協定とは、運送業の規制の全体像は運送業の労務・賃金設計をご覧ください。

この記事の要点
  • ✓特別条項を結んでも、トラック運転者の時間外労働は年960時間まで(休日労働は含まない)。
  • ✓単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内・月45時間超は年6回までの3つは、運転者には適用されない。
  • ✓様式は運転者用の第9号の3の4(一般条項)/第9号の3の5(特別条項付き)。事務員・荷役作業員は分けて書く。
  • ✓36協定の範囲内でも、改善基準告示の拘束時間(月284時間・年3,300時間など)は別に守る必要がある。
目次
  1. 00トラック運転者の36協定は何が違うのか
  2. 01年960時間の特別条項のルール
  3. 02使う様式:第9号の3の4・第9号の3の5
  4. 03記載で押さえるべき5つのポイント
  5. 0436協定を守っていても、改善基準告示は別に守る
  6. 05過半数代表者と有効期間
  7. 06締結前のチェックリスト

トラック運転者の36協定は何が違うのか

労働者に時間外労働や休日労働をさせるには、労使で36協定(時間外・休日労働に関する協定)を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。一般の労働者は、特別条項を結んでも年720時間、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内などの上限があります。

トラック運転者(自動車運転の業務に従事する労働者)は、2024年3月まで上限規制の適用が猶予されていました。2024年4月からは適用されましたが、上限の考え方は一般の労働者と異なります。

項目 一般の労働者 トラック運転者
原則の上限(限度時間) 月45時間・年360時間 月45時間・年360時間
特別条項の年間上限 年720時間 年960時間
単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内 適用あり 適用なし
月45時間を超えられる回数 年6回まで 制限なし
補足
対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制を使う場合、限度時間は月42時間・年320時間になります。

年960時間の特別条項のルール

特別条項で定める時間外労働の上限は、年960時間です。この960時間は時間外労働だけで数え、休日労働の時間は含みません。

月ごとの上限や、限度時間を超えられる回数の制限はありません。ただし、これは「毎月いくらでも働かせてよい」という意味ではありません。後で説明する改善基準告示の拘束時間の上限が、実際にはより強い制約になります。

注意
36協定を結ばずに時間外労働をさせたり、協定で定めた時間を超えて働かせたりすると、労働基準法違反として罰則の対象になります。

使う様式:第9号の3の4・第9号の3の5

トラック運転者の36協定には、2024年4月1日以降の協定から、運転者用の様式を使います。

様式 使う場面
様式第9号の3の4 自動車運転者の36協定で、特別条項がない場合(一般条項)
様式第9号の3の5 自動車運転者の36協定で、特別条項を設ける場合(2枚組)

運転者以外の労働者(事務員・運行管理者など)は、一般の様式(第9号・第9号の2)で別に届け出ることもできます。電子申請(e-Gov)には、自動車運転者用の協定届の手続も用意されています。

なお、複数の営業所がある会社では、本社でまとめて電子申請できる「本社一括届出」の対象範囲が近年広がっています。運転者用の様式が対象になっているかは、届出の前に最新の取扱いを確認してください。

記載で押さえるべき5つのポイント

POINT 1
業務の種類を分けて書く
「自動車運転者(トラック)」「運行管理者」「荷役作業員」「経理事務員」のように、業務ごとに分けて記載します。運転者とそれ以外で上限が異なるためです。

POINT 2
1年単位の変形労働時間制の対象者を分ける
対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者は、別の欄に分けて記載します(限度時間が月42時間・年320時間になるため)。

POINT 3
休日労働は回数と時刻を書く
「2週を通じて1回」のように休日労働の回数と、始業・終業の時刻を記載します。休日労働も改善基準告示の拘束時間の範囲内に収める必要があります。

POINT 4
健康・福祉を確保する措置を選ぶ
特別条項付きの様式では、限度時間を超えて働く人への健康・福祉確保措置を、示された選択肢(医師の面接指導、深夜業の回数制限、勤務間インターバルなど)から選び、具体的な内容を書きます。

POINT 5
実態に合った時間数にする
運行実績から、繁忙期と閑散期の時間外労働を見積もって記載します。実態より大きく書くと、長時間労働を前提にした運行計画と受け取られかねません。

36協定を守っていても、改善基準告示は別に守る

36協定の範囲内で働かせていても、トラック運転者には改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)が別に適用されます。

項目 改善基準告示(トラック)
拘束時間(年・月) 原則 年3,300時間・月284時間。労使協定で年3,400時間・月310時間まで(月284時間超は連続3か月まで)
拘束時間(1日) 原則13時間、最大15時間
休息期間 継続11時間以上を与えるよう努め、9時間を下回らない
運転時間 2日平均で1日9時間以内、2週平均で1週44時間以内。連続運転は4時間以内

改善基準告示そのものには罰則はありません。ただし、重大な違反が疑われる場合には、労働基準監督署と運輸支局の間で通報し合う仕組みがあり、国土交通省は、告示を守れない事業者は行政処分の対象になるとしています。36協定の時間数と、改善基準告示の拘束時間の両方を、同じ勤怠データで毎月確認できる状態にしておくことが大切です。

過半数代表者と有効期間

36協定を結ぶ労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者です。過半数代表者は、次の要件を満たす必要があり、様式のチェックボックスで確認します。

要件 1
管理監督者でないこと
労働基準法41条2号の管理監督者に当たる人は、過半数代表者になれません。

要件 2
選出の目的を明らかにして選ぶこと
36協定を結ぶ代表者を選ぶことを明らかにしたうえで、投票・挙手などの方法で選びます。

要件 3
会社の意向で選ばれていないこと
社長の指名や、会社が決めた人をそのまま代表者にすることはできません。

協定の対象期間は1年に限られるため、有効期間は1年とするのが望ましいとされています。毎年の更新時期を決め、起算日の前に届け出ておきましょう。

締結前のチェックリスト

CHECK 1
運転者用の様式を使っているか
第9号の3の4/第9号の3の5になっているか。古い様式のまま更新していないか。

CHECK 2
業務の区分は正しいか
運転者・運行管理者・荷役・事務を分けて書いているか。

CHECK 3
時間数は実態と改善基準告示に合っているか
運行実績にもとづく時間数か。拘束時間の上限と矛盾していないか。

CHECK 4
過半数代表者の選び方は適正か
投票・挙手などで選び、選出の記録を残しているか。

CHECK 5
給与計算とつながっているか
協定の時間数と、実際の時間外労働・割増賃金(月60時間超は50%)が毎月照合できるか。

まとめ

トラック運転者の36協定は、特別条項の上限が年960時間で、一般の労働者にある月単位の上限や回数制限はありません。その代わり、運転者用の様式で業務を分けて記載し、健康・福祉確保措置を選ぶ必要があります。36協定の範囲内でも改善基準告示の拘束時間は別に守る必要があるため、協定・勤怠・給与計算を同じデータで管理することが、2024年問題後の労務管理の基本です。

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※本記事は2026年9月時点の法令・告示・厚生労働省および国土交通省の公表資料にもとづく一般的な情報です。届出の様式・電子申請の取扱いは改正されることがあるため、届出前に所轄の労働基準監督署または最新の公表資料をご確認ください。

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