月平均所定労働日数の求め方|残業代の時給換算・欠勤控除の基礎を社労士が解説
残業代を計算しようとすると、最初に出てくるのが「1時間あたりの賃金(時間単価)」です。月給制の場合、この時間単価を出すために欠かせないのが月平均所定労働日数(およびそれを時間に直した月平均所定労働時間)。残業代だけでなく、欠勤控除や日割り計算の“ものさし”にもなる、給与計算の土台となる数字です。
「毎月の労働日数は20日だったり23日だったりするのに、なぜ“平均”を使うの?」という疑問も含めて、月平均所定労働日数の求め方と使い方を、計算例つきで社会保険労務士がわかりやすく解説します。
- ✓月平均所定労働日数=(365日−年間休日)÷ 12。年間の所定労働日数を12か月でならした数字。
- ✓月ごとの労働日数はバラつくため、時間単価が毎月変わらないように“平均”で固定する。これが割増賃金(残業代)を公平に計算するための基準になる。
- ✓残業代の時間単価=月給(対象手当)÷ 月平均所定労働“時間”。家族手当・通勤手当など一部の手当は基礎から除外できる。
- ✓分母の取り方は就業規則・賃金規程に明記を。曖昧なままだと未払い残業代トラブルの火種になる。
月平均所定労働日数とは(なぜ平均を使う?)
月平均所定労働日数とは、1年間の「所定労働日数(働くことが予定されている日数)」を12か月でならした、1か月あたりの平均日数のことです。これを1日の所定労働時間でかけたものが月平均所定労働時間になります。
なぜ、その月の実際の労働日数ではなく“平均”を使うのでしょうか。理由は、月によって所定労働日数がバラつくからです。たとえば祝日の多い月は20日、少ない月は23日、というように毎月変わります。もし時間単価を「月給 ÷ その月の所定労働時間」で計算すると、同じ残業1時間でも、月によって残業代が変わってしまうのです。
月平均所定労働日数(時間)は、こうした残業代の計算のほか、欠勤控除や日割り計算の基準としても使われる、給与計算の基礎中の基礎となる数字です。
計算のしかた(年間休日から逆算)
求め方はシンプルで、次の2ステップです。会社のカレンダー(年間休日数)さえ決まっていれば、すぐに計算できます。
365日(うるう年は366日)から、会社の年間休日数(土日・祝日・夏季・年末年始など)を引きます。
年間所定労働日数 = 365 − 年間休日数
年間所定労働日数を12か月で割れば、月平均所定労働日数が出ます。
月平均所定労働日数 = 年間所定労働日数 ÷ 12
1日の所定労働時間(例:8時間)をかければ、月平均所定労働時間になります(=年間所定労働時間 ÷ 12 でも同じ)。年間休日数ごとの目安を、1日8時間で計算したのが次の早見表です。
| 年間休日数 | 年間所定労働日数 | 月平均所定労働日数 | 月平均所定労働時間(1日8h) |
|---|---|---|---|
| 105日 | 260日 | 約21.67日 | 約173.3時間 |
| 110日 | 255日 | 約21.25日 | 約170.0時間 |
| 120日 | 245日 | 約20.42日 | 約163.3時間 |
| 125日 | 240日 | 20.00日 | 160.0時間 |
※年間休日にうるう年・祝日の増減を反映すると数値はわずかに変わります。実際は会社のカレンダーに基づいて算出してください。
使い道①:残業代(割増賃金)の時間単価
もっとも重要な使い道が、残業代の計算です(残業代計算の全体像は残業代(割増賃金)の計算方法で解説しています)。月給制の場合、1時間あたりの賃金(時間単価)は次の式で求めます。
この時間単価に、労働の種類に応じた割増率と残業時間をかけたものが、支払うべき割増賃金です。割増率は法律で最低基準が定められています。
| 種類 | 割増率(最低基準) |
|---|---|
| 時間外労働(法定労働時間を超える残業) | 25%以上(1か月60時間を超えた部分は50%以上) |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%以上(時間外と重なれば加算) |
| 法定休日労働(週1日の休日の労働) | 35%以上 |
もうひとつ重要なのが、時間単価の計算に含めなくてよい手当があることです。次の手当は、割増賃金の基礎から除外できます(労働基準法・同規則)。ただし、いずれも名称ではなく実態で判断され、全員に一律で支給しているものは除外できません。
| 基礎から除外できる(7種に限定) | よくある誤解 |
|---|---|
| 家族手当/通勤手当/別居手当/子女教育手当/住宅手当/臨時に支払われた賃金/1か月を超える期間ごとに支払う賃金(賞与など) | 「住宅手当」でも全員一律1万円のような支給は、住宅費用に応じていないため除外できず基礎に含める。役職手当・資格手当・精勤手当なども原則は基礎に含める。 |
つまり、基本給に役職手当・資格手当などを加えた額を月平均所定労働時間で割り、そこに割増率をかける――これが残業代計算の基本構造です。残業の取り扱いをルール化したい場合は、雇用契約書・就業規則・労使協定の基本もあわせてご覧ください。
使い道②:欠勤控除・日割り計算
月平均所定労働日数は、欠勤したときの控除額や、月の途中で入社・退職したときの日割りを計算するときにも使えます。考え方は時間単価と同じで、1日あたりの賃金を出すために分母として用います。
ただし、欠勤控除の分母を「月平均所定労働日数」にするか「その月の所定労働日数」にするかは、会社が就業規則で定めたルールによります。どちらにも一長一短があり、法律で一律に決まっているわけではありません。大切なのは、毎回同じルールで計算し、それを規程に明記しておくことです。
計算例で確認(年間休日120日のモデル)
ここまでの内容を、ひとつの例で通して計算してみましょう。次のような会社・従業員を想定します。
このように、月平均所定労働時間(163.3時間)を分母に固定しておけば、どの月でも同じ時間単価で残業代を計算できます。なお、計算途中の端数(円未満)の扱いには、行政通達で認められた処理方法があります。会社で統一した端数処理のルールを決めておきましょう。
つまずきやすい4つのポイント
就業規則に書いておくべき理由
月平均所定労働日数(時間)は、計算式そのものはシンプルですが、「どの数字を分母にするか」「どの手当を基礎に含めるか」「端数をどう丸めるか」といった運用面に、会社ごとの判断が入ります。ここが曖昧なまま運用されていると、後になって未払い残業代の請求に発展しかねません。賃金請求の時効は当面3年とされており、一人の請求が同じ働き方の他の従業員へ波及することもあります。
だからこそ、これらのルールは就業規則・賃金規程に明記しておくことが大切です。ミライズ労務では、自社の実態に合わせた就業規則・賃金規程の作成・見直しや、月々の給与計算のアウトソーシングを通じて、こうした計算の土台づくりからご一緒しています。
月平均所定労働日数は(365 − 年間休日)÷ 12で求め、これを時間に直した月平均所定労働時間が、残業代の時間単価を計算する分母になります。月ごとの労働日数の変動をならし、時間単価を年間で一定にするのが狙いです。
除外できる手当は限定列挙+実態判断、分母や端数の取り方は会社の運用判断――この“判断が入る部分”を就業規則・賃金規程で明確にしておくことが、未払い残業代トラブルを防ぐいちばんの近道です。
名古屋を拠点に、給与計算のアウトソーシングから就業規則・賃金規程の整備まで、中小企業の労務を継続的にサポートしています。残業代の計算ルールに不安があれば、現状の点検からご一緒できます。初回相談は無料です。
※本記事は一般的な情報提供であり、割増賃金の基礎に含める手当の判断、端数処理、欠勤控除の分母の取り方などは、就業規則の定めや個別の事情により異なります。詳細はお問い合わせください。