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2024.06.26 給与・賃金

月平均所定労働日数の求め方|残業代の時給換算・欠勤控除の基礎を社労士が解説

COLUMN / 給与・賃金

残業代を計算しようとすると、最初に出てくるのが「1時間あたりの賃金(時間単価)」です。月給制の場合、この時間単価を出すために欠かせないのが月平均所定労働日数(およびそれを時間に直した月平均所定労働時間)。残業代だけでなく、欠勤控除や日割り計算の“ものさし”にもなる、給与計算の土台となる数字です。

「毎月の労働日数は20日だったり23日だったりするのに、なぜ“平均”を使うの?」という疑問も含めて、月平均所定労働日数の求め方と使い方を、計算例つきで社会保険労務士がわかりやすく解説します。

この記事の要点
  • 月平均所定労働日数=(365日−年間休日)÷ 12。年間の所定労働日数を12か月でならした数字。
  • 月ごとの労働日数はバラつくため、時間単価が毎月変わらないように“平均”で固定する。これが割増賃金(残業代)を公平に計算するための基準になる。
  • 残業代の時間単価=月給(対象手当)÷ 月平均所定労働“時間”。家族手当・通勤手当など一部の手当は基礎から除外できる。
  • 分母の取り方は就業規則・賃金規程に明記を。曖昧なままだと未払い残業代トラブルの火種になる。
目次
  1. 00月平均所定労働日数とは(なぜ平均を使う?)
  2. 01計算のしかた(年間休日から逆算)
  3. 02使い道①:残業代(割増賃金)の時間単価
  4. 03使い道②:欠勤控除・日割り計算
  5. 04計算例で確認(年間休日120日のモデル)
  6. 05つまずきやすい4つのポイント
  7. 06就業規則に書いておくべき理由

月平均所定労働日数とは(なぜ平均を使う?)

月平均所定労働日数とは、1年間の「所定労働日数(働くことが予定されている日数)」を12か月でならした、1か月あたりの平均日数のことです。これを1日の所定労働時間でかけたものが月平均所定労働時間になります。

なぜ、その月の実際の労働日数ではなく“平均”を使うのでしょうか。理由は、月によって所定労働日数がバラつくからです。たとえば祝日の多い月は20日、少ない月は23日、というように毎月変わります。もし時間単価を「月給 ÷ その月の所定労働時間」で計算すると、同じ残業1時間でも、月によって残業代が変わってしまうのです。

ここがポイント
残業代(割増賃金)の時間単価は、1年を通して一定であるべき。そこで、月ごとの変動をならした「月平均所定労働時間」を分母に使い、時間単価を年間で固定します。これが“平均”を使う最大の理由です。

月平均所定労働日数(時間)は、こうした残業代の計算のほか、欠勤控除や日割り計算の基準としても使われる、給与計算の基礎中の基礎となる数字です。

計算のしかた(年間休日から逆算)

求め方はシンプルで、次の2ステップです。会社のカレンダー(年間休日数)さえ決まっていれば、すぐに計算できます。

1

年間所定労働日数を出す
365日(うるう年は366日)から、会社の年間休日数(土日・祝日・夏季・年末年始など)を引きます。
年間所定労働日数 = 365 − 年間休日数
2

12で割る
年間所定労働日数を12か月で割れば、月平均所定労働日数が出ます。
月平均所定労働日数 = 年間所定労働日数 ÷ 12

1日の所定労働時間(例:8時間)をかければ、月平均所定労働時間になります(=年間所定労働時間 ÷ 12 でも同じ)。年間休日数ごとの目安を、1日8時間で計算したのが次の早見表です。

年間休日数 年間所定労働日数 月平均所定労働日数 月平均所定労働時間(1日8h)
105日 260日 約21.67日 約173.3時間
110日 255日 約21.25日 約170.0時間
120日 245日 約20.42日 約163.3時間
125日 240日 20.00日 160.0時間

※年間休日にうるう年・祝日の増減を反映すると数値はわずかに変わります。実際は会社のカレンダーに基づいて算出してください。

使い道①:残業代(割増賃金)の時間単価

もっとも重要な使い道が、残業代の計算です(残業代計算の全体像は残業代(割増賃金)の計算方法で解説しています)。月給制の場合、1時間あたりの賃金(時間単価)は次の式で求めます。

時間単価
1時間あたりの賃金 = 月給(割増の基礎となる賃金)÷ 月平均所定労働時間

この時間単価に、労働の種類に応じた割増率と残業時間をかけたものが、支払うべき割増賃金です。割増率は法律で最低基準が定められています。

種類 割増率(最低基準)
時間外労働(法定労働時間を超える残業) 25%以上(1か月60時間を超えた部分は50%以上
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上(時間外と重なれば加算)
法定休日労働(週1日の休日の労働) 35%以上

もうひとつ重要なのが、時間単価の計算に含めなくてよい手当があることです。次の手当は、割増賃金の基礎から除外できます(労働基準法・同規則)。ただし、いずれも名称ではなく実態で判断され、全員に一律で支給しているものは除外できません。

基礎から除外できる(7種に限定) よくある誤解
家族手当/通勤手当/別居手当/子女教育手当/住宅手当/臨時に支払われた賃金/1か月を超える期間ごとに支払う賃金(賞与など) 「住宅手当」でも全員一律1万円のような支給は、住宅費用に応じていないため除外できず基礎に含める。役職手当・資格手当・精勤手当なども原則は基礎に含める

つまり、基本給に役職手当・資格手当などを加えた額を月平均所定労働時間で割り、そこに割増率をかける――これが残業代計算の基本構造です。残業の取り扱いをルール化したい場合は、雇用契約書・就業規則・労使協定の基本もあわせてご覧ください。

使い道②:欠勤控除・日割り計算

月平均所定労働日数は、欠勤したときの控除額や、月の途中で入社・退職したときの日割りを計算するときにも使えます。考え方は時間単価と同じで、1日あたりの賃金を出すために分母として用います。

1日あたりの賃金(欠勤控除の目安)
1日あたりの賃金 = 月給 ÷ 月平均所定労働日数

ただし、欠勤控除の分母を「月平均所定労働日数」にするか「その月の所定労働日数」にするかは、会社が就業規則で定めたルールによります。どちらにも一長一短があり、法律で一律に決まっているわけではありません。大切なのは、毎回同じルールで計算し、それを規程に明記しておくことです。

計算例で確認(年間休日120日のモデル)

ここまでの内容を、ひとつの例で通して計算してみましょう。次のような会社・従業員を想定します。

計算の流れ
① 年間所定労働日数365 − 120 = 245日
② 月平均所定労働時間245 × 8 ÷ 12 ≒ 163.3時間
③ 時間単価280,000 ÷ 163.3 ≒ 1,715円
④ 時間外の単価(×1.25)1,715 × 1.25 ≒ 2,144円
⑤ 残業代(10時間分)2,144 × 10 = 21,440円

このように、月平均所定労働時間(163.3時間)を分母に固定しておけば、どの月でも同じ時間単価で残業代を計算できます。なお、計算途中の端数(円未満)の扱いには、行政通達で認められた処理方法があります。会社で統一した端数処理のルールを決めておきましょう。

つまずきやすい4つのポイント

1:その月の実日数で割ってしまう
時間単価を「月給 ÷ その月の所定労働時間」で出すと、月ごとに単価が変動し、残業代が不公平になります。割増賃金の基礎は月平均所定労働時間で固定するのが原則です。

2:除外できない手当を基礎から外す
基礎から除外できるのは限定列挙された手当だけで、しかも実態で判断されます。一律支給の住宅手当や、役職・資格・精勤手当などを安易に外すと、残業代の過少計算(未払い)になります。

3:毎年の見直しを忘れる
年間休日数は、祝日やうるう年、会社カレンダーの変更で毎年変わります。古い月平均日数を使い続けると、単価がずれていきます。毎年カレンダー確定時に再計算を。

4:端数処理・分母のルールが人によってバラバラ
端数の丸め方や、欠勤控除の分母の取り方が担当者ごとに違うと、計算が安定しません。就業規則・賃金規程で統一しておくことが、トラブル防止の基本です。

就業規則に書いておくべき理由

月平均所定労働日数(時間)は、計算式そのものはシンプルですが、「どの数字を分母にするか」「どの手当を基礎に含めるか」「端数をどう丸めるか」といった運用面に、会社ごとの判断が入ります。ここが曖昧なまま運用されていると、後になって未払い残業代の請求に発展しかねません。賃金請求の時効は当面3年とされており、一人の請求が同じ働き方の他の従業員へ波及することもあります。

だからこそ、これらのルールは就業規則・賃金規程に明記しておくことが大切です。ミライズ労務では、自社の実態に合わせた就業規則・賃金規程の作成・見直しや、月々の給与計算のアウトソーシングを通じて、こうした計算の土台づくりからご一緒しています。

SUMMARY
分母を平均で固定し、ルールを規程に

月平均所定労働日数は(365 − 年間休日)÷ 12で求め、これを時間に直した月平均所定労働時間が、残業代の時間単価を計算する分母になります。月ごとの労働日数の変動をならし、時間単価を年間で一定にするのが狙いです。

除外できる手当は限定列挙+実態判断、分母や端数の取り方は会社の運用判断――この“判断が入る部分”を就業規則・賃金規程で明確にしておくことが、未払い残業代トラブルを防ぐいちばんの近道です。

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※本記事は一般的な情報提供であり、割増賃金の基礎に含める手当の判断、端数処理、欠勤控除の分母の取り方などは、就業規則の定めや個別の事情により異なります。詳細はお問い合わせください。

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