残業代(割増賃金)の計算方法|4ステップでわかる時間単価と割増率を社労士が解説
「残業代の計算、なんとなく給与ソフト任せになっている」――中小企業ではよくあることです。けれど残業代(割増賃金)の計算は、①どの残業かを区別し ②36協定を前提に ③時間単価を出して ④割増率をかける、という4つのステップに分解すれば、仕組みはそれほど複雑ではありません。逆に、このどこかを取り違えると、知らないうちに未払い残業代が積み上がってしまいます。
本記事は、残業代計算の全体像をつかむためのハブ記事です。時間単価の出し方の詳細は月平均所定労働日数の求め方に、関連テーマは各記事に譲りつつ、まずは残業代の“地図”を社会保険労務士の視点で示します。
- ✓残業代計算は「法定内・法定外の区別 → 36協定 → 時間単価 → 割増率」の4ステップに分けて考える。
- ✓割増が必要なのは法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた残業。割増率は時間外25%・法定休日35%・深夜25%・月60時間超50%。
- ✓残業をさせるには36協定の締結・届出が前提。固定残業代を払っていても、超えた分は必ず別途支払いが必要。
- ✓計算の取り違えは未払い残業代として蓄積する。賃金請求権の時効は当面3年。早めの点検が肝心。
残業代計算の全体像(4ステップ)
残業代は、次の4つのステップで計算します。順番に分解すると、どこを間違えやすいかも見えてきます。
STEP1:その残業は「法定内」か「法定外」か
残業と一口に言っても、割増が必要なものと不要なものがあります。鍵になるのが法定労働時間(1日8時間・週40時間)という基準です。
| 種類 | 内容 | 割増 |
|---|---|---|
| 法定内残業 | 所定労働時間は超えるが、1日8時間・週40時間の範囲内(例:所定7時間の会社で8時間目まで) | 割増不要(通常の時間給は支払う) |
| 法定外残業 | 1日8時間・週40時間を超える労働 | 25%以上の割増 |
たとえば所定労働時間が7時間の会社で1時間残業して8時間になった場合、その1時間は法定内なので割増は不要です(通常の時間給は支払います)。8時間を超えた分から、25%以上の割増が必要になります。「所定を超えた=すぐ割増」ではない点に注意してください。
STEP2:36協定がないと残業させられない
法定外残業や法定休日の労働を従業員にさせるには、その前提として36(サブロク)協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法36条)。これがないまま残業させると、それ自体が法律違反になります。残業代を正しく払っていても、36協定がなければ前提が崩れている状態です。
STEP3:時間単価を出す
割増を計算する元になるのが、1時間あたりの賃金(時間単価)です。月給制の場合は次の式で求めます。
ここで分母に使う「月平均所定労働時間」は、月ごとの労働日数の変動をならして時間単価を一定にするための数字です。家族手当・通勤手当など基礎から除外できる手当の扱いとあわせて、計算方法は月平均所定労働日数の求め方で計算例つきに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
STEP4:割増率をかける(25/35/50/深夜)
時間単価が出たら、労働の種類に応じた割増率をかけます。割増率は法律で定められた最低基準です。
| 種類 | 割増率(最低基準) |
|---|---|
| 時間外労働(法定外残業) | 25%以上 |
| 時間外労働が1か月60時間を超えた部分 | 50%以上 |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%以上(加算) |
| 法定休日の労働 | 35%以上 |
これらは重なると合算されます。たとえば法定外残業が深夜に及べば「25%+25%=50%以上」、法定休日労働が深夜に及べば「35%+25%=60%以上」です。月60時間を超える時間外が深夜に及べば「50%+25%=75%以上」になります。
固定残業代(みなし残業)の落とし穴
毎月一定額の残業代をあらかじめ支払う固定残業代(みなし残業手当)を導入している会社も多いでしょう。給与の見通しが立てやすい一方で、設計を誤ると「無効」と判断され、かえって多額の未払いを生むリスクがあります。
とくに誤解されがちなのが、「固定残業代を払っているから、それ以上は払わなくてよい」という考え方です。実際には、固定分に相当する時間を超えて残業させた場合、超過分は必ず別途支払う必要があります。固定残業代は“上限”ではありません。有効と認められる要件や無効になりやすいケースは、固定残業代(みなし残業)の正しい設計でくわしく解説しています。
端数処理と、未払い残業代のリスク
残業代の計算では、円未満や分単位の端数が生じます。1日ごとの労働時間を切り捨てるのは違法ですが、1か月の時間外労働の合計に生じた30分未満の端数の処理や、時間単価・割増賃金の円未満の端数処理には、行政通達で認められた方法があります。いずれにせよ、会社で統一したルールを決め、従業員に不利益にならないよう運用することが大切です。
残業代は「法定内・法定外の区別 → 36協定 → 時間単価 → 割増率」の順に計算します。割増が必要なのは法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分で、率は時間外25%・法定休日35%・深夜25%・月60時間超50%。重なれば合算します。
残業には36協定という前提があり、固定残業代でも超過分は別途支払いが必要です。取り違えは未払い(時効3年)として蓄積するため、ルールを規程に落とし込み、定期的に点検しましょう。
名古屋を拠点に、給与計算のアウトソーシングから就業規則・賃金規程の整備まで、中小企業の労務を継続的にサポートしています。残業代の計算ルールや固定残業代の設計に不安があれば、現状の点検からご一緒できます。初回相談は無料です。
※本記事は一般的な情報提供であり、割増賃金の基礎・端数処理・固定残業代の有効性などの判断は個別の事情により異なります。最新の法令・通達をご確認のうえ、詳細はお問い合わせください。